モンブラン146に憧れる/レアロのスケルトン 趣味文オリジナル誕生秘話
(この記事は2016年9月からスタートした「【趣味の文具箱】Mail Magazine」の内容を一部を転載して構成されています)
モンブラン146に憧れる
モンブラン146を愛用しています。
雑誌「趣味の文具箱」を作るきっかけになったモデルであり、記事での登場回数が最も多いモデルだと思います。だから2004年の創刊号では、146の歴史や秘密に迫りました。モンブラン、いやすべての万年筆を象徴する存在であり、半世紀に渡って進化し続けています。多くのユーザーは「世界で最高のモデル」「持っている万年筆を1本だけにするならこれ」と話します。
「趣味の文具箱」でも、いろいろな角度から146の魅力に迫ってきました。自分が感じる146の魅力は形です。旧来から「バランス型」と呼ばれる一見フツーの伝統的なフォルムをしています。国産の万年筆でも多くの類似した形を持つ人気モデルがたくさんあります。しかし146ならではのほかの似た万年筆とは違う146の独特の形があるのです。これは握ってみることですぐわかるのですが、146は「軸の真ん中から後端に向かって微妙にもっこりしている」のです。
握ったときのバランス感覚が絶妙と言われる理由は、このもっこりだと自分は思っています。
※146の魅力に迫る最新記事は、「趣味の文具箱vol.39」(2016年9月発売)でも掲載しています。超ヘビーユーザー、ペン先調整の達人など使い手の立場から魅力を語っていただいています。
レアロのスケルトン 趣味文オリジナル誕生秘話
セーラー万年筆は、いち早く万年筆のカードリッジを開発したメーカーです。そのこだわりもあり、長年カートリッジ式(と兼用のコンバーター式)の万年筆を作り続けてきました。万年筆の伝統であり旧来からのピストン吸入式のモデルはほとんどありませんでした。
しかしピストン吸入式の本格的な構造研究や設計試作はかなり以前から行われていました。その噂は自分もかなり前から小耳にはさんでおり、「例のあれはいつ世に出るのですか?」とセーラー万年筆の方にしつこく質問していたものです。
そして「やっと出ますよ」の連絡が来たのが2009年の春。試作モデルを見せていただけるとのことで、即広島へ。呉市にある工場は、戦前の建物も残るまさに日本の万年筆史の聖地。設計、技術の担当者5人が待ち構えてくれていました。あいさつもそこそこに気になったのが5人の作業着の胸ポケットに挿してある万年筆。よく見ると別のポケットにも、ある人はお尻のポケットにも皆同じ万年筆を挿しています。キャップトップが透明で、1本抜いて見せてもらうと全身をクリアな樹脂で作った完璧なスケルトンモデル。
これが2009年の夏に登場したプロフィットレアロの最終試作モデルでした。
戦後のセーラー万年筆としてはほぼ初めての量産する吸入式ということで、内部の様子がよくわかるスケルトンモデルをたくさん作り、工場の技術者をはじめいろいろな社員の方に酷使してもらって設計の改良を続けていたのです。
このスケルトンモデルがとてもかっこよかった。当然、発売当初からラインアップされるものと思っていたらその予定はない、とのこと。スケルトンモデルを大前提とすると、内部の接続部の形や接着の方法、そして材質の選び方などすべてを変えていかなければならないとのこと。呉工場の取材を終え、編集部に戻ってもあのスケルトンモデルの佇まいが頭から離れず(このときの記事は14号で掲載しています)、翌日から「趣味文オリジナルモデルをぜひあのスケルトンモデルで作ってください!」とのお願い攻勢を続けたのでした。
メーカーとしては、透明軸を前提に設計していないので難しい。担当デザイナーの意見も同様で、接合部が見えてしまっては製品以前の試作モデルとしかいいようがない…などよい返事はいただけませんでした。
でもめげません。いま国産の万年筆で、本格的な回転吸入のモデルはレアロ以外ほとんどありません。ボトルインクの百花繚乱の楽しい世界を切り開いたセーラー万年筆こそ、インクを五感で楽しめるスケルトンモデル作って欲しい、と言い続けました。
その後紆余曲折を経て、誕生したのがプロフェッショナルギアレアロの趣味の文具箱限定スケルトンモデルです。
吸入も楽しい。使っても楽しい。残量も圧倒的にわかりやすい。そしてシルバートリムとの品のあるコントラストも絶妙です。
年末登場予定の最新カラーはピンク!です。こちらは会員の皆様へ先行・抽選販売中です。100年の歴史を越える国産ブランドの気合いが伝わるキュートな透明軸の完成を楽しみにしているこの秋です。
【今回の話に登場した本は】
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清水 茂樹(しみず しげき)
1965年、福島県会津若松市生まれ。2004年より文具情報誌「趣味の文具箱」編集長。「ステーショナリーマガジン」「ノート&ダイアリースタイルブック」も手掛ける。ソリッドな黒軸、ネイビーブルー色のインク、風合いが育つ革、手のひらサイズが大好き。