デザイン・ワイ×趣味の文具箱「本革手帳 レコード288 ディープブルー」の魅力
筆欲。
ヒツヨク、と読む。
これは我々ヒトにしかない知的な欲求。なんでもいいから、書きたい、描きたい。そんな筆欲を刺激する道具を前にすると、ワクワク、ドキドキしてしまう。それは、例えば小さな1冊のノートでも…。
まっさらなノートを前にして、ページを開いてみる。真っ白な見開きにこれから書かれること、記録される出来事、記憶される時を想像すると、その白さに無限に広がる可能性を感じる。
デザイン・ワイとのコラボで生まれたこの小さな手帳は、小さいからこそ筆欲を激しく刺激する。上質で、どこか懐かしい雰囲気は「こんなノートをポケットに携えて、どこか遠くへ旅に行ってみたい」と思わせる。佇まいは静かだけど、知的好奇心を強く揺さぶるのだ。
手にすると、あっと声を上げずにはいられない。表紙は本革。その手触りはしなやかで繊細。山羊革を使っている。色は趣味の文具箱オリジナルの「ディープブルー」。深くて風情のある深い青。
手がけているのはデザイン・ワイの吉野 浩さん。革の漉き、製本、小口染めなど、ほぼすべてが吉野さんの手作り。繊細な作りだけど、全体からはハンドメイドならではの温もりが伝わってくる。独自の糸かがりの手法「パピヨン綴じ」は、開きもすこぶるよい。
用紙は「トモエリバー手帳用クリーム52g/平方m」。もうこの紙は多くを語る必要がない、多くの万年筆ファンを虜にしている手帳用の軽量紙だ。表面はなめらかだけどペン先が滑りすぎない絶妙な書き味。軽くて薄いのにインクの裏抜けはほとんどしない。ページ数は「288」。厚み約14mmでこのページ数は驚異的。改めてトモエリバーの魅力を再確認。
さて、この手帳をどう使いこなすか。
1日1ページの日記帳の場合、288日分となる。これは約9.5か月分。1週間で日記を2日さぼると1冊でほぼ1年分。いや2日分を1ページに記入して、これをきっちり毎日続けてみようか。この場合は1冊で576日分が記録できる。これは1年+約7か月分となる。
映画好き、読書好きなら、その記録に。1ページに1冊の読後の所感を残しても288冊を記録できる。旅好き、温泉好きなら…と、まっさらなこの1冊を眺めているだけで楽しい妄想が広がっていく。
表紙の山羊革は経年変化による艶の出具合も素晴らしい。毎日持ち歩いて、丁寧に楽しく使い続けると、ともに歩んできた自分だけの時間が艶となって表れてくる。それもまた愛おしい。
(「趣味の文具箱」編集長 清水茂樹)
『デザイン・ワイ×趣味の文具箱 本革手帳 レコード288 ディープブルー』の詳しい情報、ご購入はこちらをご覧ください。
https://www.ei-member.jp/shumibun/products/5923
清水 茂樹(しみず しげき)
1965年、福島県会津若松市生まれ。2004年より文具情報誌「趣味の文具箱」編集長。「ステーショナリーマガジン」「ノート&ダイアリースタイルブック」も手掛ける。ソリッドな黒軸、ネイビーブルー色のインク、風合いが育つ革、手のひらサイズが大好き。