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2017.06.15

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小日向日記│万年筆と刃物

小日向日記│万年筆と刃物

良く切れそうな刃先を眺めていると、無性に万年筆で何か文字を書きたくなります。あるいは、書き味の良い万年筆で文字を書いている時に、刃物の美しい刃先を思い浮かべます。書きたい。そして、刃の切れ味を感じたい。これらには、どのような共通点があるのでしょうか。

ペン先と刃物の使用感

小日向は子どもの頃から料理をしていたせいか、刃物といえば包丁に親しみがありました。包丁がよく切れると、具材の仕上がりがまるで違うことに驚いたものです。トマトなど、スパッと切れると薄皮にもたつくこともなく、舌触りも抜群に良いし、味まで違うように感じました。また、キャベツの千切りを作る時のような「大量生産もの」は、よく切れる包丁を使えば時短にもなります。包丁が先か、筆記具が先か、ともあれ「道具によって行いの結果は変わるのだ」と実感しました。

もの心ついて好きな包丁を選び、鋼を研ぐという知恵がついた頃には、大根を桂むきにするなら薄刃かなとか、刺身なら柳刃か蛸引かといった具合に、用途によって包丁を使い分けるようになりました。

これが、万年筆を使うようになってペン先がいくつか増えてくると、あれっ? 包丁選びみたいだな! という感覚があり。例えば、

・宛名を書くのなら、太字にする
・旅先でインクを長持ちさせるために、細字にする
・移動中でも迅速に使いたいから、キャップレスにする
・長時間書き続けることになるなら、太軸でペン先も大きなものにする

…という風に選ぶところなど、料理における包丁そのものです。

また、万年筆選びで大切なのはペン先だけではなく軸やクリップなどにも及ぶのと同様に、包丁も大切なのは刃だけではありません。刃と柄の間に鍔(つば)があって境目が劣化しにくいもの、柄に水牛の角をはめてありしっかりと固定されているもの、柄に稀少木材が使われていてどんどん手になじんでいくもの…と多くのバリエーションがあります。そしてそれらが切れ味や使い心地、経年変化と密接な関わりがあるところも、万年筆での装飾と思えていたところが実は機能だった、という感嘆に通じるものがあります。

そして、用途と自分の手にぴったりきた時の気持ち良さといったら!

狙い通りにうまく切れた時、また自分好みの線を書けた時、ついては美味しい料理になった時、眺めても読み返しても楽しくなる文章にまとまった時の嬉しさは、ともにひとしおのものです。

ペン先という刃物

d20170615-01_1

万年筆で書いていて気分が乗ってくると、紙をすべるペン先が良い音を奏で始めます。この時に文字の長い線やカーブにさしかかれば、ペン先が切れ味を増して、集中力が高まっていくものです。その感覚があたかも刃物を扱っているようで、刃先の波紋を眺めている時のようなうっとりとした気持ちに包まれます。

そんな集中力の高揚が、万年筆と刃物の一番の共通点なのかも知れません。

文具で刃物といえば、カッターナイフやデザインナイフの鋼刃がなじみ深いですが、これらにも万年筆ときわめて近しい「筆感」があります。刃の先端で「引く」という一方通行の動きをするところは文字書きと異なる点ではあるものの、新たな刃でシャッと潔く切る時の裂け目は、ためらうことのない文章を書けたような清々しい心地になるものです。

カッター用品で切れるのは直線のみならず、ペン型のデザインナイフには首が360度回転するものもあって、力の加減に応じてカーブを描くこともできます。そんな曲線切りをできる、NTカッターのSW-600GPで「文字を書いて」みました。

d20170615-01_2

「し」での速度を上げるなだらかな曲線など、万年筆で書く時の感覚と同じくらいに気持ちいい!

切る用事がないとなかなか使うことのないカッターやデザインナイフでも、ただ心地良い筆感を得るためだけに手にしてみるのも良いのではないでしょうか。というよりもむしろ、用がなくても進んで使いたいところです。なぜなら、万年筆で書くために格好の心の準備が整うから。

刃物で精神を研ぎ澄ませ、万年筆で書きものに向かう。そして、万年筆で紙にインクの裂け目を刻む。万年筆と刃物は、互いを味わうことによって互いの相乗効果が得られるようで、筆欲がますます満たされていく高鳴りを感じます。書くように切りたい。そして、切るように書きたい。そう思いを新たにしています。

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小日向 京(こひなた きょう)

小日向 京(こひなた きょう)

「趣味の文具箱」ライター。日常生活における手書きと文具の有効活用を日々研究し続けている。著書「考える鉛筆」(アスペクト)。

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