郷愁は、ときに物欲を強く刺激する
多くの小学校ではシャープペンシルが禁止されているようですが、明確な理由はなく、昔からそうだったから伝統的に禁止しているという風潮のようです。
自分の小学校では、鉛筆以外でも自由に選んで授業に使うことができました。いまでも記憶に残っているシャープペンシルのひとつが、三菱鉛筆のペッカー。軸の前寄りにノックボタンが付いているサイドノック式。このノックボタンから先端にかけてのフォルムは、当時の最新鋭戦闘機ミラージュF1を思わせるシャープさで、授業中でも思わずうっとりしたものです。クリップがある後端は大胆に外れ、中の消しゴムを引き抜くと芯詰まりのときに使う針が出てきます。授業中に、この針を意味もなく練り消しにぶすぶす刺して遊んでいた記憶も残っています。サイドノックの機構もかなり気になり、しまいには授業中に分解を始めて…と、いまさらながら気がつきましたが、小学校でシャープペンシルを禁止する理由は自分の行動にはっきりと含まれていましたね。
ある古い文具店を訪ねたとき。ここではデッドストックもかなり多く、古いシャープペンシルを眺めていたらペッカーが無性に欲しくなってきました。しかし店頭にはなく、「ペッカーがもし入荷したらぜひ連絡ください」とお願いしておきました。
それから約1年後、ペッカー見つけましたよ!の連絡が店主からありました。
さっそく店に行くと、黒い軸のまさしく自分が使っていた色、形のペッカーがそこにありました。さらに店主と話題にしていた先端パーツを回す方式の回転繰り出し式のシャープペンシルも並んでいました。ノックせず無音でまったりと繰り出し量を無段階で調節できるミニシャープを当時最も使いこんでいたのです。
キャンパスノートを開いて、これらのペンを握ると、気分は一気に小学生の古き良きあの時代へ戻ります。文房具って楽しいですね。
この記事は2017年4月7日に配信されたメールマガジンの内容を一部を転載して構成されています。各種情報は変更されている場合があります。
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清水 茂樹(しみず しげき)
1965年、福島県会津若松市生まれ。2004年より文具情報誌「趣味の文具箱」編集長。「ステーショナリーマガジン」「ノート&ダイアリースタイルブック」も手掛ける。ソリッドな黒軸、ネイビーブルー色のインク、風合いが育つ革、手のひらサイズが大好き。