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2017.05.18

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いまこそ、小学生に万年筆を!

いまこそ、小学生に万年筆を!

万年筆ファンにとっての春告げ鳥、日本橋三越本店の「世界の万年筆祭」が終わりました。トークイベントに登場したフリーアナウンサー堤信子さんは青山学院女子短大や法政大学などで教壇に立っています。トークで印象的だったのは、学生が提出するレポートに「万年筆で書くこと」を条件にしているという話題。今時の大学生はほとんど万年筆を使ったことがなく、「えーっ、使ったことがない」「万年筆なんて持っていません」などと言ってくるものの、堤さんは「万年筆買って!」ときっぱり告げるそうです。

学生はしぶしぶ万年筆を入手してレポートを書き始めるのですが、その未体験の書き味に驚き、最初はプレピーやカクノだったのが、次第に筆欲に目覚めて国産の金ペンを手に入れ、さらには舶来ものへと深みに入っていく人も少なくないとか。

3月上旬、札幌の大丸藤井セントラルではイベントで筆記具の店頭に立たせていただきました。お母さんとやって来た中学2年生の男子生徒は、趣味の文具箱オリジナルの♯3776センチュリー細字を買っていってくれました(ありがとうございます!)。現物を前に買おうか迷っている彼のすぐ隣でお母さんは「あんた何本買ったら気がすむのよ」「万年筆だけいっぱい持っていても使わないでしょ」と。

すかさず自分は「いやいや、お母さん、万年筆は…」と息子に代わって必死の説得をこころみました。すると彼は「ちょっと考えてまた来ます」と。

中学2年生にとってお小遣いから2万円を捻出する現場は、清水の舞台のようなものでしょう。1時間くらいが過ぎて親子が戻ってきました。「これ買います!」。彼は満面の笑みでした。

自分の10代では万年筆に遭遇することはありませんでした。大学時代にレポートを万年筆で書いた記憶もありません。今考えると、かなりもったいない気がします。

世界の万年筆祭のイベントではペリカン日本の万年筆アドバイザー、山本英昭さんのお話も伺いました。万年筆に携わって55年の大ベテランです。ペリカンのスーベレーンはサイズの違いでラインアップが豊富に揃っています。初心者はどのサイズから選ぶべきか?のテーマでは、スーベレーンで最大級のM1000を買いに来た小学生の女の子が話題となりました。彼女は普段から書道をしており、ペンを立てぎみに持つ習慣があり、細めの字をスムーズに書くためにはペン先が軟調なM1000のEFが自分の手にベストであることを発見したとのこと。

万年筆は、使うほどに書き手の考え方、ときには生き方を変える力を持っている不思議な道具。小学生から手に馴染ませ、人生に寄り添わせていく道具であるべきと思っています。ある小学校で、授業にパソコンやタブレットを本格的に導入することが始まったりすると今時のニュースとして取り上げられたりしていますが、万年筆を小学生に使わせることのほうがよっぽどグッドニュースなはず。

ラミー サファリは、ドイツの小中学生が書写の授業で使う万年筆として多くの学校で導入されています。初めて使うユーザーにとって最適のバランス、グリップの形状などが追求され、それが機能美となって形に表れています(冒頭のラミー サファリの写真は、懐かしい趣味の文具箱オリジナルの1号モデル、ロゴ入りグレー軸です)。

日本では、板書の多くがプリント配布に代わり、毛筆の授業さえ減っている傾向があるなど、学生が手書きの価値に触れ、手書きの良さを感じる機会は確実に減っています。

その一方、「趣味の文具箱」では小中学生の読者が確実に増えて来ています。誌面でも彼らを応援するような企画を考えて、手書きの良さをしっかり発信していきたいと思っています。

この記事は2017年3月24日に配信されたメールマガジンの内容を一部を転載して構成されています。各種情報は変更されている場合があります。
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清水 茂樹(しみず しげき)

清水 茂樹(しみず しげき)

1965年、福島県会津若松市生まれ。2004年より文具情報誌「趣味の文具箱」編集長。「ステーショナリーマガジン」「ノート&ダイアリースタイルブック」も手掛ける。ソリッドな黒軸、ネイビーブルー色のインク、風合いが育つ革、手のひらサイズが大好き。

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