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2017.03.31

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時代に翻弄されない万年筆とインク?

時代に翻弄されない万年筆とインク?

実は、時代劇が好きです。

昭和40年代、小学生の頃はテレビの時代劇が全盛で、祖父祖母がコタツに入っているとき、茶の間のテレビは必ず時代劇だった記憶があります。

最近はこの当時の古い時代劇がBSで再放送されています。昨日見ていた「必殺シリーズ」では例の名調子が流れ、「時代に翻弄される~」のナレーションが耳に残りました。特に大河ドラマのような時代劇ではおなじみのフレーズですね。

自分の故郷、福島県の会津では幕末の殿様、松平容保公が時代に激しく翻弄された人でした。将軍に振り回され、不義に生きず、街は壊滅し、藩は本州の最北へ…

ちょっと長くなりそうなので、雑誌作りでよく感じる「時代に翻弄される」件を。

自分は文房具の雑誌と合わせてカメラの雑誌も手がけています。

昔からフィルムを使うカメラが大好きです。この10年、フィルムカメラの存在もデジタルという時代に翻弄され続けています。

カメラの雑誌を作り始めたのは約18年前。この当時はデジタルカメラがぼちぼちと出始めた時代。画素数は150万画素のカメラがほとんどで、200万を超えたことがちょっとしたニュースになっていた記憶があります。この当時、試しに200万画素で撮影して雑誌の印刷に使おうとしましたが、色校正を見てフィルムに差し替えました。掲載するサイズは切手くらいの小さいものでしたがダメでした。

まだまだフィルムカメラが主流で、作っているカメラ雑誌では20世紀末から続いていたクラシックカメラブームをひたすら追求する内容でした。自分が好きなカメラは電池いらずのフルメカニカルで、シンプルで普遍的なデザインをしているもの。ライカM4やニコンFM-2を愛用しています。

カメラの語源は「暗い部屋」です。

手のひらに乗るような小さな真っ暗の箱の中でフィルム上の粒子を感光させて像を作るのがカメラの基本的な仕組みです。

今は昔、小学生の頃、日光写真にはまった記憶があります。子供向けの雑誌の定番の付録でした。(かなり感度が低い)印画紙にネガに相当する大きなフィルムを重ねて日光に当てると、感光した部分だけがゆっくりと濃く青くなって像がゆっくり浮かび上がってくる。なんだか魔術のようなその光景にわくわく、どきどきしたものです。

カメラの魅力は感光という化学現象がシンプルな小さな箱の中で起きること。だからカメラに複雑な機構や便利な機能は求めません。確実にフィルムを巻き上げ正確なシャッタースピードでシャッターを開閉してくれればそれで十分。いま、そんな古くてかっこいいカメラが若いひとたちや女性にも注目されています。

※フィルムカメラをずっと愛用し続けている人も、未体験でこれから楽しみたい人も、すべてのフィルムカメラを愛する人に向けたムック「フィルムカメラスタイル」を2016年12月に発刊しました!

スマホの普及で高校生でも1人1台が高性能カメラ(=スマホ)を持ち歩く時代となりました。いま「趣味の文具箱」に掲載している写真もすべてデジタル撮影です。日常の撮影にフィルムは不要な時代となり、需要は激減。フィルムや現像の価格は10年前に比べて2~3倍となりました。新しいフィルムカメラを開発する主要なメーカーもありません。カメラを新しく選ぼうと思っても選択肢は中古カメラだけ。それでもフィルムは作り続けられており、(コストは高くなりましたが)以前と変わらず趣味として楽しむ環境は続いています。

カメラが万年筆だとすると、フィルムはインクです。

趣味の文具箱40号では、1000色を軽く超えるインクを掲載しました。

その中で「時代に翻弄されるインク」といえばブルーブラックでしょう。

本来のブルーブラックは鉄分が含まれていて、紙面に乗ると鉄分が酸化して青いインクが黒く変色していく。酸化することで耐水や耐光の性能が上がるインクです。以前の公文書などでは必須のインクでしたが、これもデジタルな時代のあおりを受けて激減しました。いま、ブルーブラックとして売られているほとんどのインクは染料を使った「ブルーブラックな色」のインクです。「趣味の文具箱」では、旧来の酸化するブルーブラックは「古典ブルーブラック」と呼称して区別しています。古典ブルーブラックは酸化するので金属でできたペン先に優しくありません。とくにスチールペン先では取り扱いに注意が必要です。

酸化という反応に頼らず、書いた文字が雨に濡れても流れない、書いた紙を直射日光に当て続けても色が消えないインクがあります。「顔料インク」です。色の元となる顔料を極小にして、それを沈殿しないように絶えず分散させる技術で実現しました。以前は、色数はブラックとブルーくらいしかありませんでした。趣味の文具箱40号のインク特集で掲載した顔料インクは全部で42色! この数年で顔料インクはたくさんの色が選べる楽しいインクとなりました。

そして、今編集している41号では古典ブルーブラックと同じ仕組みの古典インクを集めています。プラチナ万年筆から6色が新しく登場し、さらにあるヨーロッパのインクメーカーからは一気に20色以上が登場する予定。時代とともに姿を消そうとしていた、と思われた古典インクも復活。これからさらに盛り上がっていくことでしょう。

万年筆やインクはいま百花繚乱。多種多様な選択肢が広がり、組み合わせを変えて楽しみ方は無限に広がっています。間違いなく最高の時代といえると思います。皆さん、いま、このときをめいっぱい楽しみましょう!

さて、フィルムカメラの世界では、最近では新しく個性的なフィルムがヨーロッパの小回りの利くメーカーから次々と登場しています。そしてカメラ量販店などではよく売れているそうです。時代に翻弄されながらも、新しい人たちに支持されはじめたフィルムカメラも、今の時代に合った楽しみ方の先に新しい魅力をまた生み出してくれるはず。

松平容保公は明治26年に鬼籍に入りました。それから120年以上が経過していますが、会津では銘菓や銘酒の名前などにも使われ、その精神も街に生き続けています。街を歩くとモノクロの肖像写真があちこちに貼ってあります。

幕末の容保公の官職の位は「中将」。自分が大好きな日本酒は「会津中将」です。鶴乃江酒造という200年以上続く酒蔵が作る銘酒です。このお酒はめちゃくちゃうまいです。会津若松市のほぼ真ん中にあるので観光などで足を運んだら、ぜひ立ち寄ってみてください。

この記事は「2017年1月27日に配信された」メールマガジンの内容を一部を転載して構成されています。各種情報は変更されている場合があります。
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清水 茂樹(しみず しげき)

清水 茂樹(しみず しげき)

1965年、福島県会津若松市生まれ。2004年より文具情報誌「趣味の文具箱」編集長。「ステーショナリーマガジン」「ノート&ダイアリースタイルブック」も手掛ける。ソリッドな黒軸、ネイビーブルー色のインク、風合いが育つ革、手のひらサイズが大好き。

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