小日向日記│#3776センチュリー ボルドーロゼに惚れました
プラチナ万年筆の#3776センチュリーは、「#3776」と冠した1978年の発売以来多くの万年筆ファンの心をとらえて離さないシリーズです。
発売当初は富士山の標高を示した「#3776」名であったのが、2011年にリニューアルして「#3776 センチュリー」となり、以降より多くの軸バリエーションが増えました。
なかでも2012年3月に発売されたブルゴーニュはほんのり透けるワイン色の軸と、インクの蒸発を防ぐキャップ内部のスリップシール機構の搭載で、質感と機能が一体となった万年筆として大きな話題を呼びました。
ブルゴーニュは同年に第21回ISOT文具大賞 機能部門 優秀賞を受賞しています。
その#3776センチュリー ブルゴーニュの発売から約5年。趣味の文具箱がプラチナ万年筆とコラボレーションして生まれたのが、「ボルドーロゼ」です。
ボルドーロゼはブルゴーニュの軸をピンクゴールドであしらった特別バージョン。センチュリーのピンクゴールドフィニッシュといえば2014年発売の「ニース」が記憶に新しく、昨年2016年にはナガサワ文具センターが透明軸の「NAGASAWAオリジナル センスケ ピンクゴールド」を発売しました。また、近日に発売となったばかりのライラック色が可憐な「ニース リラ」もピンクゴールドフィニッシュですね。
今ピンクゴールドがまさに旬! なのです。
ピンクゴールドの追憶
ゴールドのようでゴールドじゃない、ほんのり赤みを帯びたピンクゴールド。金色・銀色ときたら銅色、あるいは真鍮色?…と連想するところ、そのいずれとも異なるピンクゴールド色は独特な「ひと味違う」色みで見る者を魅了します。
まるで自分のために現れ出てきたような、稀有で忘れがたい高揚感。
この感覚は、いったいどの記憶からくるものなのか。
◆美しい人の肌に触れる華奢なネックレス
◆ともに戦った騎士が身体に忍ばせていた短剣の柄
◆寝台列車の長旅で、食堂車のテーブルに埋め込まれていた金属の縁どり
◆クリスマスイブの夜中に部屋の窓が開いて、サンタクロースは意外に寒いと知った雪の輝き
…ピンクゴールドから呼び覚まされるのは、そうした「空想上の記憶」なのだと感じます。
人は実際に見たものや体験したものを記憶に残し、それらの経験値からものを考え行動しますが、それだけではない「空想という体験」が記憶の隙間に入り込んでいるはずで、ピンクゴールドはその「経験値としては認められないけれど、確かに自分の心に抱いたこと」に訴えかけ、その思いを引き出してくれるようです。
ワインのように芳醇な軸色は、ピンクゴールドとの相性もぴったり。
その組み合わせの美しさは、趣味文CLUBの商品ページの写真をじっくり眺めてみてください。
細部の写真はスクロールした下部にあります。
▽(ペン先・細軟)
https://www.ei-member.jp/shumibun/products/41
書き味までも美しい
#3776センチュリーの金属パーツ部分には、他にイエローゴールドとロジウムがあります。イエローゴールドは製品の色名では「ゴールド」と称しますが、ここではピンクゴールドとの対比のためにイエローゴールドと表記して書き進めます。
小日向は、はじめにイエローゴールドのブルゴーニュを、のちにロジウムのシャルトルブルーを買い求めました。現在手元にある字幅は、
イエローゴールド:M・B
ロジウム:細軟・F・M・B
となっていて、同じ字幅でもイエローゴールドとロジウムでは筆感が変わることを実感しています。
「イエローゴールドは軟らかめ、ロジウムは硬め」というざっくりとした印象があるなか、はたしてピンクゴールドはどうなのだろうという期待がありました。
ここにピンクゴールドのFが加わり、書いてみるとこれがまたイエローゴールドともロジウムとも違う!
上の写真は右から、ロジウムF、イエローゴールドM、ピンクゴールドFで書きました。インクはパイロットのブルーブラック、紙はツバメ大学ノートのフールス紙です。
ピンクゴールドには、みずみずしい氷の上をつらーっとすべり流れるようなやわらかさと、引き締まった硬さがあります。これは気持ちいい。直線の安定感も、カーブのしなやかさも、#3776センチュリーペン先の真骨頂です。
本来ならばイエローゴールド・ロジウム・ピンクゴールドと同じFで書きたかったのですが、イエローゴールドのFをまだ持っていないのでした。
…じゃ次の買い物はイエローゴールドFだねって? 私も今ものすごくそう思っています。
そして、ピンクゴールドの細軟・M・Bも試したい!
この趣味文のボルドーロゼには細軟もあるのが嬉しいところ。次はそれかな…はたまた太字のBか。イエローゴールドFなら細軟も欲しくなるよね…。
かくして#3776センチュリーがいっそう大好きになるのでした。
このピンクゴールドは、ペン先の素材によって変化する書き味を余すところなく教えてくれる一本です。
文字を書き進めるたび、心の思いが豊かに刻まれていくようです。それが現実のものであろうと、空想のものであろうと、私たちのなかに漂う追憶はピンクゴールド色に彩られていくことでしょう。
<♯3776センチュリー ボルドーロゼ 各字幅の詳細ページ>
>細字
>細軟
>中字
>太字