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2017.02.02

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小日向日記│縦書きの話

小日向日記│縦書きの話

日本語は、縦書きでも横書きでも文字を書いたり読んだりするという稀有な言語のひとつです。

長い日本語史で見れば横書きはあとから加わったものの、現代ではもはや横書きの方に慣れ親しんでいたりするのではというほどで、特にノートや手帳に何かを記すという場面では横書きを選ぶことが主流といえます。

その理由には、欧文文字との混在記述があるでしょう。

「字幅EF」とか「古典BB」といった頭文字ならまだしも、「ToDo」や「Century」などの連続文字は横書きで書き進めたほうが断然楽です。縦書きで書いていて欧文が出てきた時、そのいくつかの文字のためだけにわざわざ紙面の向きを変えて書くようなことはしたくありません。

今こちらの文章を表示しているようなインターネットサイトでの横組表示にも、すっかり目が慣れました。

しかしやっぱり縦組が落ち着く時はあります。たとえば新聞は、縦組で読みながら新聞紙をガサガサさせるのが雰囲気出ますし、書店で棚の本を探す時にも、縦方向に書いてあるとすんなり目に入ってきます。

鮨屋や蕎麦屋の品書きも縦方向が似合うし、桐箱に書かれた筆文字も、縦がいい。

それらは「見る」「読む」時のことで、自分で書く時のほうはというと、縦書きはどこかかしこまった感覚があり、目上の方に送る手紙や、宴席での芳名帳や、祝儀袋への記名といったものが浮かびます。

こうしたイメージに引っ張られて縦書きを敬遠するのは、惜しいことです。

ふだんから縦書き縦書きと言っている小日向が「縦書きの話」というタイトルで何か言おうとしてるんだから、これ縦書きしようぜって話に違いないよなーと思われたかたもあると思います。

そうです、縦書きをしよう! と申したい。

日本語は、基本「左上から始まって、右下で終わる」という、縦書きにぴったりの文字なのだから。

筆運びの疲れが軽減され、素早く書けて、文字を綴る楽しみがさらに増すようです。

「それ言うのわかってたから早く話進めてよー」という声もありそうで……前振りが長かったかも知れません。

縦書きはまっすぐ書けない

縦書きは好きじゃなくて、という人は「まっすぐ書けないから」という理由が多いようです。そして「罫線があると余計にまっすぐ書けない」という声も聞かれます。その通りだと思います。真っ白な紙に書くのは地図もなく目的地にたどり着けと言われているようであり、罫線があるところに書くのは廊下の中央にまっすぐな足跡を残せと言われているように感じます。(ここで「言っている」相手は、紙です)

これは難しい。しかし難しいからと避けるのにはあまりにもったいない魅力にあふれる縦書きです。そこで、1文字ごとに「あっ曲がった」と思ったらそれを調整するように次の1文字を「曲がり返す」ように配置させるようにするのはどうでしょう。左に曲がったら次は右寄り、右に曲がったら次は左寄り…というふうに。

串焼きを作ろうとして串に具を刺し並べていく時、具の中央に串を刺すことを心がけながらもズレが生じるものです。それを次に刺す具で調整をつけながら全体のバランスを取り、具がまっすぐ串に刺さっているように仕上げる……それと同じことです。

さらに「文字と文字の言葉のかたまり」を意識しながら書くとさらに効果的で、たとえば、

『朝のコーヒーはおいしい』

と書くなら、「朝の」、「コーヒーは」、「おいしい」をそれぞれひとかたまりとして書きつなぎます。この言葉ごとのかたまり化は横書きでも行うことと思います。

すると、「のコーヒー」あたりでたいてい曲がってくることが予想され、その場合に「の」は独立させて「コーヒー」でバランスを取り、ここで持ち直したあと、続く「は」から「おいしい」へと書きつないでいく。

以下のような感じです。▽

d20170202-02_1

これは「綺麗な書きかた」ではなく、縦書きはまっすぐ書けないよ、という気持ちを解消して縦書きを書くために私のやっていることです。

これだけでぐんと「いけそう」な気がしてきますよね。縦書きへの親しみも湧くのではないでしょうか。

ノートや手帳にも縦書き

縦書きはかしこまった場よりもむしろ、迅速に文字を書き留める場に向いています。

それがノートや手帳です。

打ち合わせをしながらサッと書く記録、アイデアをまとめる文章、キーワード、立って書く人との待ち合わせ予定、電話のメモなど、文字の形など二の次で書いておくべしという時に記述の速さを実感できます。

そして、あとから判読がつきやすいのも良いところです。

それは前述の「串刺し書き」が判読性の高さに貢献しており、文字と文字、また言葉と言葉の差異が際立つために、かなり乱雑に書いた文字でも前後の様子から推察しやすいのだと実感します。

筆記音にも注目してみてください。

ゆっくり書く時と、速く書く時で筆記音は変わるものですが、縦書きで速度をつけて書く時の流れるような音色──ウィンナーワルツかはたまた義太夫かという調べ──にはいっそう書く高揚度も高まるようで、その筆記音に新たな思いつきが漂うことも少なくありません。

横書きの合間に、ちょっとノートや手帳の向きを変えてひとしきり書いてみるのも一興です。

どの筆記具を使おうかなと選ぶ時のように。文字の方向も時に選んでみると、日本語のさらなる楽しみが広がります。

そして文具の楽しみもさらに広がることでしょう。

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小日向 京(こひなた きょう)

小日向 京(こひなた きょう)

「趣味の文具箱」ライター。日常生活における手書きと文具の有効活用を日々研究し続けている。著書「考える鉛筆」(アスペクト)。

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